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ランサムウェア1件で、漏えい報告が2,745件になった
個人情報保護委員会が四半期ごとに出している「漏えい等報告の処理状況」を、公表が始まった9回ぶん並べました。
件数は四半期あたり4,069件から7,141件の間で動いています。最も多かった四半期は、そのうち2,745件が1つの事案によるものでした。
件数は、事故の数ではありません。
この記事の要点
- 四半期の件数は 4,069〜7,141件で推移している
- 最多の四半期は、1事案の報告が 2,745件を占める
- 委託元にも委託先にも報告義務があるため、こうなる
- 2回以上公表された8四半期のうち、6つが後から書き換わっている
- 最も多い要件は要配慮個人情報で、大半は誤交付
使った数字
出典は1つだけです。
- 個人情報保護委員会「漏えい等報告の処理状況」
- 一覧:
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/activity/ - 対象:令和6年度第1四半期(2024-08-28 公表)から令和8年度第1四半期(2026-09-02 公表)までの 9回
- 参照日:2026年9月21日
この四半期公表は令和6年度第1四半期から始まりました。それ以前は四半期ごとの実数がなく、令和5年度は年間値を4で割った参考値(3,320件)が載っているだけです。
この件数は「報告された件数」ではありません。各資料の注にこうあります。
漏えい等報告の確報受付後、委員会において処理を完了した段階で件数として計上している。
事故が起きた時期ではなく、委員会が処理を終えた時期で四半期に振り分けられます。後で効いてきます。
なお、四半期ごとの値はその四半期が最後に掲載された公表回の値(最新公表値)を採用しました。理由は後述します。
報告件数の推移
個人情報と特定個人情報は別々に集計されています。まず個人情報です。
各四半期の処理件数(個人情報)。最新公表値。出典:個人情報保護委員会「漏えい等報告の処理状況」
特定個人情報のほうは、1つの四半期だけ形が違います。
| 四半期 | 特定個人情報 |
|---|---|
| 令和6年度 第1四半期 | 64件 |
| 令和6年度 第2四半期 | 72件 |
| 令和6年度 第3四半期 | 1,827件 |
| 令和6年度 第4四半期 | 89件 |
| 令和7年度 第1四半期 | 104件 |
| 令和7年度 第2四半期 | 102件 |
| 令和7年度 第3四半期 | 95件 |
| 令和7年度 第4四半期 | 91件 |
| 令和8年度 第1四半期 | 113件 |
他の四半期が64〜113件なのに対し、令和6年度第3四半期だけ1,827件。16〜29倍です。同じ四半期は、個人情報のほうも7,141件で最多でした。
最多の四半期は、1つの事案だった
理由は公表資料に書かれています。原文から引きます。
…社会保険/人事労務業務支援システムを運営するシステム会社のサーバが不正アクセスを受け、ランサムウェアにより、同社のシステム上で管理されていた個人データが暗号化され、漏えい等のおそれが発生した事案(以下「特定労務システム事案」という。)に関し、多数の委託元から報告が寄せられていたところ、当該委託元に対する調査が終了した…ことによるものである
事案が起きたから山ができたのではありません。調査が終わって、まとめて処理されたから山になりました。処理完了の時期で計上する、という先ほどの定義がここで効きます。
この事案に関する報告は、個人情報で2,745件、特定個人情報で1,726件ありました。除くとこうなります。
| 全体 | 当該事案分 | 除いた件数 | |
|---|---|---|---|
| 個人情報 | 7,140件 | 2,745件 | 4,395件 |
| 特定個人情報 | 1,826件 | 1,726件 | 100件 |
この3つの数値は令和6年度第3四半期の公表資料(2025-03-05)のものです。その後、総計は個人情報7,141件・特定個人情報1,827件に改訂されています(後述)。事案分の2,745件・1,726件は変わっていません。
除いた4,395件は、前の四半期(4,069件)との差が326件です。7,141件という突出は消えます。
なぜ1件が数千件になるのか
システムを運営していた会社に委託していた企業が、それぞれ報告義務を負うからです。
さらに資料の注には、委託している場合は「原則として委託元と委託先の双方が報告をする義務を負う」とあります。同一の事象について、複数の経路から報告が積み上がります。委託元が実際に何社だったかは公表されていません。
「報告が何件あったか」と「事故が何件あったか」は、別の数字です。
なお特定個人情報の1,726件は、マイナンバーが暗号化されていた等の理由で、報告対象事態には該当しないと判断されています。件数に計上されていても、被害があったとは限りません。
公表された件数は、後から書き換わっている
各回の資料には、その四半期の件数だけでなく、過去の四半期の件数も参考として載っています。9回ぶんを突き合わせると、数字が変わっていました。個人情報の総計です。
| 四半期 | 改訂の履歴 | 改訂回数 |
|---|---|---|
| 令和6年度 第1四半期 | 4,549 → 4,565 | 1 |
| 令和6年度 第2四半期 | 4,071 → 4,072 → 4,069 | 2 |
| 令和6年度 第3四半期 | 7,140 → 7,141 | 1 |
| 令和6年度 第4四半期 | 5,232 | 0 |
| 令和7年度 第1四半期 | 5,650 → 5,645 → 5,654 → 5,652 | 3 |
| 令和7年度 第2四半期 | 4,533 → 4,528 | 1 |
| 令和7年度 第3四半期 | 4,623 → 4,635 | 1 |
| 令和7年度 第4四半期 | 4,602 | 0 |
2回以上公表された8四半期のうち、6つが書き換わっています。令和7年度第1四半期は、下がって、初出を超えて上がって、また下がりました。
これは隠されていません。9回のうち8回の資料に、注としてこう書かれています。
本資料の計数は公表時点のものであり、「個人情報保護委員会年次報告」等の段階で数値等が改訂される可能性がある。
差は最大で16件なので、傾向は変わりません。ただし、ある時点の記事が引用した数字は、いまの公表値とは違うということです。引くときは、いつ時点の値かを書く必要があります。
この記事の数字も、2026年9月21日時点で公表されている値です。
何が報告されているのか
最新の令和8年度第1四半期の内訳です。個人情報取扱事業者から報告された報告対象事態(5,451件)を、該当する要件ごとに分けたものです。
| 施行規則第7条の該当要件 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 第1号(要配慮個人情報) | 3,196件 | 58.6% |
| 第3号(不正の目的) | 1,450件 | 26.6% |
| 第2号(財産的被害が生じるおそれ) | 1,093件 | 20.1% |
| 第4号(千人超) | 246件 | 4.5% |
複数の要件に当てはまる事案があるため、合計は100%を超えます。割合の分母は四半期の総計(6,101件)ではなく、個人情報取扱事業者から報告された件数です。
最も多いのは要配慮個人情報です。その中身について、資料はこう書いています。
今期においては病院や薬局に限らず、損害保険業者における誤交付によるものも目立っている
前の四半期までは「大半は病院や薬局における誤交付」でした。不正アクセスやランサムウェアの話ではありません。渡す相手を間違えた、という事故です。
この数字で言えないこと
- 事故が増えたか減ったかは分かりません。1事案が数千件になる構造がある以上、件数の増減は事故の増減と一致しません
- 処理完了の時期で計上されるので、件数の山は調査が終わった時期を映しているかもしれません
- 報告が増えた理由も分かりません。事案が増えたのか、報告されるようになったのかを、この数字は区別しません
- 9回ぶんしかありません。季節性を判断できる長さではありません
言えるのは、公表された件数がこう動いたということと、その動きの一部は1つの事案と、処理のタイミングで説明がつくということだけです。
まとめ
- 四半期の件数は 4,069〜7,141件。最多の四半期は1事案の報告が 2,745件を占める
- 委託元にも委託先にも報告義務があるため、1つの事故が数千件の報告になる
- 除くと 4,395件で、前の四半期との差は326件
- 公表値は 8四半期のうち6つが後から改訂されている。資料の注にそう書かれている
- 最多の要件は要配慮個人情報(58.6%)で、中身は病院・薬局や損害保険業者の誤交付
四半期ごとに公表されるので、次は令和8年度第2四半期の数字が出ます。そのときに同じ並べ方で更新します。
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