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「実務5年以上」を公的統計で調べたら、同じ5年ではなかった
不採用の理由が記録できた76社のうち、79%が「経験不足」でした。返ってきた文面には、たとえば「5年以上の経験がない」というものがありました。
その5年に根拠があるのかを、厚生労働省の統計で調べました。結論から書くと、根拠は見つかりませんでした。
この記事の要点
- 落ちた理由で最も多かったのは「経験不足」。76社の79%
- 統計で経験年数別の年収を見たが、3職種で形が揃わなかった
- 自分の経歴に一番近い職種は、伸びが最大なのが10年以降だった
- 求人の「5年」と統計の「5年」は数えているものが違う
- この調査の職種分類に、セキュリティ職は無い
落ちた理由で最も多かったのは「経験不足」
103社に応募して、書類で落ちたのが71社。そこに面接後の不採用を加えて、理由を記録できたのが76社です。
そのうち79%が「経験不足」でした。返ってきた文面には、こういうものがありました。
- 「5年以上の経験がない」
- 「セキュリティ以外の経験が長く、即戦力として期待できない」
この2つは違うことを言っています。前者は年数の話、後者は経験の中身の話です。79%の内訳をどちらか分けて記録していないので、「全部が年数だった」とは言えません。
詳しい内訳は103社応募した記録に書きました。
公的統計で、経験年数別の年収を見る
使ったデータ
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2023年)です。e-Stat の API から取りました。
- 統計表:
0003447838「一般_職種(小分類)_経験年数階級別DB」 - 職種はIT系の3つ。男女計・企業規模計
- 年収は所定内給与額×12 + 年間賞与で計算(以下の%は、この万円の値から計算しています)
IT職種3つの年収
| 職種 | 0年 | 1〜4年 | 5〜9年 | 10〜14年 | 15年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | 393万 | 487万 | 600万 | 665万 | 745万 |
| その他の情報処理・通信技術者 | 356万 | 434万 | 529万 | 552万 | 643万 |
| ソフトウェア作成者 | 368万 | 417万 | 478万 | 573万 | 625万 |
3職種とも、0年から15年以上で 1.7〜1.9倍になります。
🔴 ところが、伸び方の形が揃わなかった
区間ごとの増え方を並べると、職種によってまったく違いました。
| 区間 | システムコンサルタント・設計者 | その他の情報処理 | ソフトウェア作成者 |
|---|---|---|---|
| 0年 → 1〜4年 | +23.9% | +21.9% | +13.3% |
| 1〜4年 → 5〜9年 | +23.2% | +21.9% | +14.6% |
| 5〜9年 → 10〜14年 | +10.8% | +4.3% | +19.9% |
| 10〜14年 → 15年以上 | +12.0% | +16.5% | +9.1% |
システムコンサルタント・設計者は、前半で大きく伸びて後半で鈍ります。「5年で折り返す」形です。
ソフトウェア作成者は逆でした。伸びが最大なのは 5〜9年 → 10〜14年 の +19.9% です。
その他の情報処理は、5〜9年の先でいったん +4.3% まで落ちたあと、+16.5% に戻ります。
自分に近い職種ほど、話が合わない
自分の経歴は開発とインフラです。統計の職種でいえば、近いのはソフトウェア作成者かその他の情報処理で、システムコンサルタント・設計者ではありません。
そして「5年で折り返す」形がきれいに出ているのは、システムコンサルタント・設計者だけでした。
最初は「5年で折り返す」と書こうとしました。それは3職種のうち1つだけを見た結論でした。
区分が5年刻みなので、そもそも「5年」は特定できない
データは 0年 / 1〜4年 / 5〜9年 / 10〜14年 / 15年以上 の5区分です。
伸びが鈍るとしても、それは 5〜9年を抜けたあとの話で、何年目が境目かはこの粗さでは分かりません。
同じ「5年」でも、数えているものが違った
ここが一番大きい問題でした。
- 求人票の「5年」 — セキュリティの実務経験の年数
- 統計の「5年」 — その職種での経験年数
別のものです。統計のシステムコンサルタント・設計者の「5年」は、セキュリティを5年やった人の話ではありません。
だから「求人が5年を求めるのは、統計でも5年で給与が上がるからだ」とは言えません。重ねられない数字でした。
自分の600万も、統計に当てはめられなかった
4回の転職で、年収は 240 → 300 → 500 → 600 → 800万でした。4社目のときが600万です。
統計のシステムコンサルタント・設計者の 5〜9年がちょうど600万なので、最初はここに重ねようとしました。やめました。
- 職種が違う(自分はシステムコンサルタントではない)
- 年数を「開発11年」で数えるか「セキュリティ1年」で数えるかで、当たるセルが変わる
- 15マスのうち、数字が近いセルを選べばいくらでも一致させられる
個人の実額と平均値は、そもそも重ねるものではありません。
自分の場合、年数を聞かれたのは外からのときだけだった
社内異動でセキュリティのポジションに入ったときは、経験年数を聞かれませんでした。外からの応募では、年数で落ち続けています。
ただしこれは自分の1件ずつの経験です。社内だから聞かれなかったのか、たまたまなのかは分かりません。一般化はできません。
この話は社内で手を挙げて入った記録に書きました。
この統計の限界
- この調査の職種分類に、セキュリティ職の区分はありません。IT職種で代用しています
- 所定内給与額には残業代が入りません。金額が低めに出るだけでなく、伸び方の形そのものが歪む可能性があります。残業代の比率が経験年数で変わるためです。どちら向きに歪むかは、この統計だけでは分かりません
- 在籍している人しか数えられていません。途中で辞めた人は入っていません
- 2023年の調査です
年数と年収に対応があること自体は読めます。ただ、その対応が能力によるものか、年功や年齢構成によるものかは、このデータでは切り分けられません。
まとめ
- 落ちた理由で最も多かったのは「経験不足」。76社の79%。ただし年数の話か経験の中身の話かは分けて記録していない
- 統計の経験年数別の年収は、3職種で形が揃わなかった
- 自分に一番近いソフトウェア作成者は、伸びが最大なのが 5〜9年 → 10〜14年(+19.9%)
- 求人の「5年」と統計の「5年」は数えているものが違う。重ねられない
- 調べて分かったのは、根拠が見つからなかったということでした
数字を並べれば何か言えると思っていました。実際には、言えないことのほうがはっきりしました。それも記録しておきます。