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有価証券報告書の「事業の状況」に「サイバーセキュリティ」と書いた3月決算の上場企業は16%

金融庁は毎年「記述情報の開示の好事例集」を出していて、その定量分析(2025年版は Appendix)に、有価証券報告書の「事業の状況」欄に特定の単語を含む会社を EDINET で数えた表があります。2024年版と2025年版を合わせると、2023年3月期から2025年3月期まで3年ぶんが並びます。
「サイバーセキュリティ」の語を含む会社は、2025年3月期で2,261社中371社、16.4%でした。2023年3月期から2025年3月期の2年で、11.1%から16.4%に増えています。
「情報セキュリティ」なら55.3%です。語がある会社でも、サステナビリティの記載欄に書いているのは28.3%で、金融庁は「事業等のリスク」での開示が多いと書いています。
この記事の要点
- 2025年3月期、「事業の状況」に「サイバーセキュリティ」を含む3月決算の上場企業は 371社/2,261社(16.4%)
- 3期の推移は 11.1% → 13.5% → 16.4%。社数は259 → 312 → 371
- 「情報セキュリティ」は 55.3%(1,250社)。「データセキュリティ」は1.6%
- 語がある371社のうち、サステナ記載欄に書いたのは 105社(28.3%)。残りは別の欄
- 金融庁の原則の別添は、サステナビリティ情報に含まれうる事項として サイバーセキュリティを例示している。ただし書くことを求めてはいない
使った数字
出典は金融庁の資料3つです。
- 「記述情報の開示の好事例集2025(サステナビリティ情報の開示)」の【Appendix】定量分析(2025年12月25日公表。2026年3月27日の最終版でも同じ数字)
- 「記述情報の開示の好事例集2024」の【参考】定量分析(2024年12月27日更新版。公表ページは
https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20241227.html) - 「記述情報の開示に関する原則(別添)―サステナビリティ情報の開示について―」(2023年1月31日)
- 公表ページ:
https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20251225.html - 参照日:2026年10月10日
数え方は資料の注に書かれています。2025年版の表1の注です。
決算日時点で上場しており、2025年7月1日までに有価証券報告書を公表した3月末決算の企業を対象として集計
対象は3月決算の上場企業だけで、12月決算などは入っていません。2024年3月期の注は「2024年7月1日までに2024年3月期の有価証券報告書を公表した企業」です。2023年3月期の対象の条件は、どちらの資料にも書かれていません。
数えているのは「事業の状況」欄にその単語が含まれているかで、書いた中身の量や質ではありません。有価証券報告書の他の欄(提出会社の状況など)は数えていません。注には、知的財産や人材確保には別の表記も含めたとありますが、サイバーセキュリティにはその注記がありません。語の一致で数えたと読めるので、「サイバー攻撃」「不正アクセス」とだけ書いた会社は数に入らないと考えられます。表記ゆれの扱いは資料にありません。
全体の社数は年によって違います。2023年3月期2,324社、2024年3月期2,312社、2025年3月期2,261社です。割合は各年の全体に対するものです。
2年で11%から16%に増えた
「事業の状況」欄に「サイバーセキュリティ」の語を含む会社の割合です。
「サイバーセキュリティ」を含む開示を行った会社の割合。括弧内は社数/全体。出典:金融庁 好事例集2024 定量分析・2025 Appendix
社数は2年で112社増えました。全体は63社減っています。全体が2,324社のままなら、2025年3月期は16.0%です。
セキュリティに関する3つの語を並べます。
| 単語 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 情報セキュリティ | 1,111社(47.8%)※ | 1,183社(51.2%) | 1,250社(55.3%) |
| サイバーセキュリティ | 259社(11.1%) | 312社(13.5%) | 371社(16.4%) |
| データセキュリティ | 31社(1.3%) | 32社(1.4%) | 37社(1.6%) |
| 全体 | 2,324社 | 2,312社 | 2,261社 |
※ 出典の表記は48.7%ですが、1,111社/2,324社を計算し直すと47.8%です。同じ行の他の語は計算が合うので、出典側の転記ミスと見て、計算し直した値を載せています。
「情報セキュリティ」は半分を超えています。「サイバーセキュリティ」はその3分の1以下です。同じ会社が両方の語を使っているかどうかは、この表からは分かりません。
参考までに、同じ表にある他の語では、人的資本が82.2%、気候変動が76.7%、人権が49.6%です。
書いた会社の7割は、サステナ記載欄ではなく別の欄に書いている
有価証券報告書には「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄があります。金融庁はこれを「サステナ記載欄」と呼び、語を含む会社のうち、その欄に書いた会社を別に数えています。
| 年 | 語を含む会社 | うちサステナ記載欄 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 259社 | 54社 | 20.8% |
| 2024年3月期 | 312社 | 76社 | 24.4% |
| 2025年3月期 | 371社 | 105社 | 28.3% |
2025年3月期で、残りの266社は「事業の状況」の中の別の欄に書いています。金融庁は Appendix でこう書いています。
サステナ記載欄での開示割合が少ない情報セキュリティ、サイバーセキュリティ及び知的財産については、「事業等のリスク」での開示が多く、DXは、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」での開示が多い。
人的資本は96.1%、気候変動は95.5%がサステナ記載欄に書かれています。「事業等のリスク」欄に書いた社数そのものは、資料にありません。
サステナ記載欄に書いたプライム企業は4.4%(2024年3月期)
2024年版の定量分析には、サステナ記載欄に書いた会社の市場区分ごとの内訳があります。2024年3月期だけで、分母は各市場区分の3月決算上場企業の数です。
| 市場区分 | 全体 | サステナ記載欄に「サイバーセキュリティ」 | 割合 |
|---|---|---|---|
| プライム | 1,135社 | 50社 | 4.4% |
| スタンダード | 954社 | 22社 | 2.3% |
| グロース | 165社 | 3社 | 1.8% |
| 東証以外 | 58社 | 1社 | 1.7% |
これはサステナ記載欄に限った数です。「事業の状況」全体での市場区分別の数は、資料にありません。2025年版の Appendix には市場区分の表がありません。
原則の別添は、サイバーセキュリティを例示している
「記述情報の開示に関する原則(別添)」には、サステナビリティ情報に何が含まれうるかの例が書かれています。
サステナビリティ情報には、国際的な議論を踏まえると、例えば、環境、社会、従業員、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティなどに関する事項が含まれ得ると考えられる。
Appendix の注によると、集計した語のうち「サイバーセキュリティ」と「データセキュリティ」はこの別添の例示から採ったもので、「情報セキュリティ」は金融庁が加えた語です。例示されている語で、2025年3月期に語を含む会社が16.4%、サステナ記載欄に書いた会社は4.6%(105/2,261)です。
別添は「含まれ得ると考えられる」と書いているだけで、サステナ記載欄に書くことを求めてはいません。「事業等のリスク」に書くのも正規の開示です。
ここからは出典ではなく、この記事の見方です。GRC の仕事をしていても、自社のセキュリティの取り組みが有価証券報告書のどの欄に、どの語で書かれているかを見る機会は多くありません。この表には社名が出ないので、自社の有価証券報告書がこの語を含むか、サステナ記載欄に書いているかは、表では分かりません。自社の有価証券報告書の「事業の状況」で、この語がどの欄にあるかを見れば分かります。
この数字で言えないこと
- 語の有無であって、中身ではありません。「サイバーセキュリティ」と書いた会社の対策が進んでいるかどうかは、この数字からは分かりません
- 「情報セキュリティ」だけで書いた会社は「サイバーセキュリティ」の数に入りません。「サイバー攻撃」など別の語で書いた会社も入らないと考えられます。84%の会社が何も書いていない、という意味ではありません
- 数えているのは「事業の状況」欄だけです。有価証券報告書の他の欄に書いた会社は入っていません
- 3月決算の上場企業だけです。12月決算の会社と非上場の会社は入っていません
- 同じ会社が年をまたいで数えられているかは、資料からは分かりません。全体の社数は毎年変わっています
- 市場区分の表は2024年3月期のサステナ記載欄だけで、2025年3月期の内訳はありません
まとめ
- 「事業の状況」に「サイバーセキュリティ」を含む3月決算の上場企業は 16.4%(371/2,261)。2年で11.1%から増えた
- 「情報セキュリティ」を含む会社は 55.3%。「サイバーセキュリティ」の3倍以上
- 語がある会社でも、サステナ記載欄に書くのは 28.3%。金融庁は「事業等のリスク」での開示が多いと書いている
- 市場区分では、サステナ記載欄に書いたプライム企業は 4.4%(2024年3月期)
- 原則の別添はサイバーセキュリティを例示しているが、サステナ記載欄に書くことを求めてはいない
直近2年は12月に定量分析が公表・更新されました。2026年版が出たら、2026年3月期の列を足します。
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