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有価証券報告書の「事業の状況」に「サイバーセキュリティ」と書いた3月決算の上場企業は16%

著者:SecBilly 公開 2026-10-10

報告書の並ぶ書架から一冊を抜き出して開く人のイラスト
イラストは AI 生成

金融庁は毎年「記述情報の開示の好事例集」を出していて、その定量分析(2025年版は Appendix)に、有価証券報告書の「事業の状況」欄に特定の単語を含む会社を EDINET で数えた表があります。2024年版と2025年版を合わせると、2023年3月期から2025年3月期まで3年ぶんが並びます。

「サイバーセキュリティ」の語を含む会社は、2025年3月期で2,261社中371社、16.4%でした。2023年3月期から2025年3月期の2年で、11.1%から16.4%に増えています。

「情報セキュリティ」なら55.3%です。語がある会社でも、サステナビリティの記載欄に書いているのは28.3%で、金融庁は「事業等のリスク」での開示が多いと書いています。

この記事の要点

16.4%サイバーセキュリティ(371/2,261)
11.1%2年前の同じ割合(259/2,324)
55.3%情報セキュリティ(1,250/2,261)
28.3%語がある会社のうちサステナ欄(105/371)

使った数字

出典は金融庁の資料3つです。

数え方は資料の注に書かれています。2025年版の表1の注です。

決算日時点で上場しており、2025年7月1日までに有価証券報告書を公表した3月末決算の企業を対象として集計

対象は3月決算の上場企業だけで、12月決算などは入っていません。2024年3月期の注は「2024年7月1日までに2024年3月期の有価証券報告書を公表した企業」です。2023年3月期の対象の条件は、どちらの資料にも書かれていません。

数えているのは「事業の状況」欄にその単語が含まれているかで、書いた中身の量や質ではありません。有価証券報告書の他の欄(提出会社の状況など)は数えていません。注には、知的財産や人材確保には別の表記も含めたとありますが、サイバーセキュリティにはその注記がありません。語の一致で数えたと読めるので、「サイバー攻撃」「不正アクセス」とだけ書いた会社は数に入らないと考えられます。表記ゆれの扱いは資料にありません。

全体の社数は年によって違います。2023年3月期2,324社、2024年3月期2,312社、2025年3月期2,261社です。割合は各年の全体に対するものです。

2年で11%から16%に増えた

「事業の状況」欄に「サイバーセキュリティ」の語を含む会社の割合です。

「サイバーセキュリティ」を含む開示を行った会社の割合。括弧内は社数/全体。出典:金融庁 好事例集2024 定量分析・2025 Appendix

社数は2年で112社増えました。全体は63社減っています。全体が2,324社のままなら、2025年3月期は16.0%です。

セキュリティに関する3つの語を並べます。

単語2023年3月期2024年3月期2025年3月期
情報セキュリティ1,111社(47.8%)※1,183社(51.2%)1,250社(55.3%)
サイバーセキュリティ259社(11.1%)312社(13.5%)371社(16.4%)
データセキュリティ31社(1.3%)32社(1.4%)37社(1.6%)
全体2,324社2,312社2,261社

※ 出典の表記は48.7%ですが、1,111社/2,324社を計算し直すと47.8%です。同じ行の他の語は計算が合うので、出典側の転記ミスと見て、計算し直した値を載せています。

「情報セキュリティ」は半分を超えています。「サイバーセキュリティ」はその3分の1以下です。同じ会社が両方の語を使っているかどうかは、この表からは分かりません。

参考までに、同じ表にある他の語では、人的資本が82.2%、気候変動が76.7%、人権が49.6%です。

書いた会社の7割は、サステナ記載欄ではなく別の欄に書いている

有価証券報告書には「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄があります。金融庁はこれを「サステナ記載欄」と呼び、語を含む会社のうち、その欄に書いた会社を別に数えています。

年語を含む会社うちサステナ記載欄割合
2023年3月期259社54社20.8%
2024年3月期312社76社24.4%
2025年3月期371社105社28.3%

2025年3月期で、残りの266社は「事業の状況」の中の別の欄に書いています。金融庁は Appendix でこう書いています。

サステナ記載欄での開示割合が少ない情報セキュリティ、サイバーセキュリティ及び知的財産については、「事業等のリスク」での開示が多く、DXは、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」での開示が多い。

人的資本は96.1%、気候変動は95.5%がサステナ記載欄に書かれています。「事業等のリスク」欄に書いた社数そのものは、資料にありません。

サステナ記載欄に書いたプライム企業は4.4%(2024年3月期)

2024年版の定量分析には、サステナ記載欄に書いた会社の市場区分ごとの内訳があります。2024年3月期だけで、分母は各市場区分の3月決算上場企業の数です。

市場区分全体サステナ記載欄に「サイバーセキュリティ」割合
プライム1,135社50社4.4%
スタンダード954社22社2.3%
グロース165社3社1.8%
東証以外58社1社1.7%

これはサステナ記載欄に限った数です。「事業の状況」全体での市場区分別の数は、資料にありません。2025年版の Appendix には市場区分の表がありません。

原則の別添は、サイバーセキュリティを例示している

「記述情報の開示に関する原則(別添)」には、サステナビリティ情報に何が含まれうるかの例が書かれています。

サステナビリティ情報には、国際的な議論を踏まえると、例えば、環境、社会、従業員、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティなどに関する事項が含まれ得ると考えられる。

Appendix の注によると、集計した語のうち「サイバーセキュリティ」と「データセキュリティ」はこの別添の例示から採ったもので、「情報セキュリティ」は金融庁が加えた語です。例示されている語で、2025年3月期に語を含む会社が16.4%、サステナ記載欄に書いた会社は4.6%(105/2,261)です。

別添は「含まれ得ると考えられる」と書いているだけで、サステナ記載欄に書くことを求めてはいません。「事業等のリスク」に書くのも正規の開示です。

ここからは出典ではなく、この記事の見方です。GRC の仕事をしていても、自社のセキュリティの取り組みが有価証券報告書のどの欄に、どの語で書かれているかを見る機会は多くありません。この表には社名が出ないので、自社の有価証券報告書がこの語を含むか、サステナ記載欄に書いているかは、表では分かりません。自社の有価証券報告書の「事業の状況」で、この語がどの欄にあるかを見れば分かります。

この数字で言えないこと

まとめ

直近2年は12月に定量分析が公表・更新されました。2026年版が出たら、2026年3月期の列を足します。

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SecBilly

フルスタックエンジニアを約11年、そこから同じ会社で情報セキュリティへ1年3か月、 現在は GRC 専任(セキュリティ・GRC は通算3年10か月)。 情報処理安全確保支援士(RISS)を受験中です。勤務先は公開していません。

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